Taul

廃市のTaulのレビュー・感想・評価

廃市(1984年製作の映画)
4.0
『廃市』(1984)VODで初鑑賞。原作未読。「はいし」と読む。大林宣彦監督を偲んで気になっていた作品を。角川での『時をかける少女』の次がこのATGでの福永武彦原作の純文学的な小さな映画とは。全編福岡県柳川市ロケで16mmカメラによる撮影が美しくもおぼろげな記憶のようで胸がしめつけられる。

『廃市』語りや作曲が大林監督自身で私小説風。ギミックを封印した静謐な作品だが、ノスタルジー、美しい少女と呪い、現実と想像の狭間、土着のものと他者、死の匂い、そんな大林イズムは健在。青年のひと夏の経験とその記憶の影に潜む孤独な愛たちや悔恨。抑制の効いた文学的な大林作品も素晴らしい。
Taul

Taul