菩薩

ダウン・バイ・ローの菩薩のレビュー・感想・評価

ダウン・バイ・ロー(1986年製作の映画)
4.2
『パターソン』以前のジャームッシュベストはやはりこれかと。トム・ウェイツかジョン・ルーリーかで言えば断然ジョン・ルーリー。自ら率いたラウンジ・リザーズはその音楽を「フェイクジャズ」と称し、ジャズに肩肘置きながら、パンクにもロックにもファンクにもブルースにも根ざすこと事なく、No New York以降のフィールドで自由な活動を続けていたわけだが、そんな用語を拝借するのであればこれは「フェイク脱獄映画」。普通の脱獄映画であればさて脱出ルートはどうする、逃走経路はどうする、成功後はどうナリを潜めると、そう言った時に大胆されど綿密な計画性に焦点が当てられるものだが、この映画はあっという間に脱獄してあっという間に逃げおせてこれまたあっさり終わる。監獄からY字路へと、囚われの人生から自由を謳歌する人生への分岐点を鮮やかに提示し、縁など腐る前に断ち切りゃいいと刹那的に描いて魅せるジャームッシュの「らしさ」、優しさだけでは生きられず、別れを選ぶ者もある中で、再び彼らがその長い旅路のどこかで出会うのかは分からぬし、彼らの人生は少しどころでなくはみ出してしまっているわけだが、その道の先には誰も知らぬ明日が待っている。人生は枝分かれ、世界はそんな風に今日も回り続けている、この道を行けばどうなることか…のやつである。