シズヲ

ダウン・バイ・ローのシズヲのレビュー・感想・評価

ダウン・バイ・ロー(1986年製作の映画)
4.0
終始気だるげでなんだか奇妙な映画。大したイベントも抑揚もなく、本当にだらだらのんびりと物語が進む。そこに退廃的なモノクロの映像と長回し等によるカットが加わることで『非日常的なのに何となく日常を切り取ったような雰囲気がある』とでも言うべき世界観が築かれているのがグッと来る。

主役三人の掛け合いのなんとも言えぬ滑稽さが印象的で、変な間が生み出す奇妙な漫才のテンポにフフってなってしまう。ベニーニ初登場時の微妙な空気やアイスクリーム大合唱のようなヘンテコな場面がやたら印象に残るし、湿地帯をボートで突き進む場面なんかは会話の滑稽さと景色の美しさのコントラストが際立っていて特に好き。三人の作り出すムードに何だかんだで引き込まれてしまう上、トム・ウェイツら役者自体の魅力も良い。編集もなかなか独特で、前述したように日常を切り取ったようなダラダラ感に加えて肝心の脱獄シーンを超簡潔に描く等の思い切りの良さが面白い。

作風をまだ掴みきれなかった序盤は退屈な印象もあったけど、ロベルト・ベニーニが出てくる刑務所の場面からは魅力を飲み込めたのもあって不思議なくらい楽しめた。本当に終始平坦なノリが続くのに、ラストになると気が付けば寂しさすら感じてしまうのがニクい。
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