イチロヲ

遠い明日のイチロヲのレビュー・感想・評価

遠い明日(1979年製作の映画)
4.0
服役中の父親のことを知らずに成長した青年(三浦友和)が、父の冤罪を証明するべく、単身北九州へと出立する。A・J・クローニン著「地の果てまで」を映像化している、サスペンス・ドラマ。タイトルの「明日」は「あした」と読む。

70年代末期、ポスト・シラケの反権力闘争を投影させている作品。関係者の居場所を辿り、手掛かりを集めながら、警察機関と裁判所の暗部に肉薄していく。シチュエーション移動がとても早く、スクリーン映えする個性派俳優が続々と顔を見せる。

主人公がツンツンした年頃の青年であり、"周囲の人間が敵対者(裏切り者)に見える"というビョーキに苛まれているところが醍醐味。支援者側では、新聞社の社長(若山富三郎)と権力者の情婦(いしだあゆみ)が、抜群の存在感を放っている。

神代監督の奇抜な作家性が薄口になっており、80年代に同監督が手掛けることになる、テレビ用サスペンス・ドラマのプロトタイプ版とも呼べる作品に仕上がっている。「私の父は無実だ」と書かれたプラカードを掲げて、ストリートを練り歩くゲリラ撮影が最高潮。
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