垂直落下式サミング

機動警察パトレイバー2 the Movieの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

3.0
公に身を捧げたおまわりさんとしてのパトレイバー部隊の熱い心意気。それがすっぽり抜け落ちて、熱血に冷ややかな視線をおくっているのが、劇場版パトレイバーのダメなところ。
その他、よくも悪くも原作との相違は多い。原作厨の僕としては、なんか後藤隊長が普通にただのめちゃめちゃ有能な人になっちゃってて、解釈違い。あの人は、そんな単純なキャラクターじゃあねえと思うんだけどな。
まあ確かに切れ者で、部下からするとわりといい上司だけど、組織のなかで協調性がなく、物事に対して冷徹で手段を選ばないんだけど、でも仕事場で堂々とポルノ雑誌広げてナチュラルにセクハラ発言してくるダメなオッサンでもあるわけで。そっちの後藤隊長のほうが愛せます。
攻殻機動隊もそうだけど、押井守はカッコいいところを拡大解釈しすぎ。キャラクターの倫理とか、哲学とか、こうあるべきだって政治論とか、そういうのを重要視しすぎる。
押井守の描く政治論は、あんま嫌い。構造化された組織や社会のなかにおいて、ひとりひとりが各々で独自に判断をしながらもルールに基づいて仕事を遂行すること。その欺瞞を重箱の隅をつつくようにクローズアップしたがるのは、風刺にしてもちょっと厳しすぎだ。
治安を守る。悪いやつと戦う。勧善懲悪、美名で結構、そこまで悲観的になることはないですよ。おまわりさんが自分の仕事を誇れなくなったら、その国家は終わりなんですから。
誰か一人の優秀さとか、決断とか、勇気とか、必死さとか、それにそこまで依存せずに、みんなの手によるそこそこのDO THE BESTで、なんとなくうまくやってくの。血のかよったシステムとは、そういうことを言うもんだと思うんですよ。