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機動警察パトレイバー2 the Movieのslowのレビュー・感想・評価

4.8
″この街はね…、
リアルな戦争には狭すぎる。″
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戦争とは無縁になりつつある
日本に戦争の緊迫感を
投下した日本アニメ史に
残すべき遺産であり傑作!

『シン・ゴジラ』と同じく
″◯◯が日本の町を
襲ったらどうなるか?″
をシュミレーション的に
描いた作品だが、
正直『シン・ゴジラ』よりも
本作こそ邦画の歴史に
残すべき代表作だと思う。

{あらすじ}
ベイブリッジが
ミサイル爆撃される。
撮影された映像には
自衛隊機が映っていた…。

まずこの映画は
映画として観てはいけない。
たとえるなら、
ジュースが入ったコップを
うまく掴んだ自分と
落としてしまった自分…
それぐらいの近い″現実″を
本作は見せている。

″もし自分が住む町で
戦争が起きたら…?″

考えてもイメージが
浮かばないと思う。
けれどこの作品は
今の日本には縁遠い戦争を
あえて不釣り合いな光景で
見せる事で″違和感″を感じさせ,
視覚的に戦争という認識が
自分にとっては他人事で、
ゴジラのような
虚構的存在だった事に
気づかされる…。

また本作は終盤になるまで
「″敵の姿が映らない″」
手法を使っており、
『ジョ-ズ』や『激突!』に通じる
敵の全貌を焦らす演出が
敵の存在感を強調させ、
敵が動くか、
敵の正体に近づくと、
潜水艦のソナー音のような
無機質で冷たいBGMが流れ,
『ジョーズ』の″ダンダン…♪″
のような緊張感を帯びる。
この演出がめっちゃ好き!

見えない敵に翻弄される模様は
マジックショーにも似た
ある種のエンターテイメント
に近い高揚感を抱かせ、
作風は静かなれど
映画としての機能を
ちゃんと果たしている。

台詞一つ一つも
心にくるものばかりで
この一本だけでも名言の宝庫♪

″悪い軍隊なんていない。
あるのは悪い指揮官だけだ″

″国家に真の友人はいない…
この国はもう一度、
戦後からやり直す事になるのさ。″

″まともな役人には
二種類の人間しかいない。
悪党か、正義の味方だ。″

本作のラストシーンで
テロ首謀者の言葉と共に
スタッフロールが流れると
脱力状態になる。
それ程までにメッセージ性が濃く
映画という枠組みを越えた
もう一つの現実から
自分がいる現実に立ち戻り
自分が生きてる日本という国は
今後どうなっていくのか…
″平成″から″令和″に変わる今、
思いを巡らせてみるのも
ありかもしれない…。
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