<概説>
息子の未来を想い、実の父親であると言い出せぬ河原者の男。しかし彼の息子への慈愛は、皮肉にも親子をすれ違う運命へと導いていく。悲恋悲哀を静かに綴る、巨匠小津安二郎の初期傑作。
<感想>
やはり小津安二郎はスゴイ!!!
何気ないワンショットからすッッと観客を物語に導いていき、清貧な口調で語りかけてくる。ジム・ジャームッシュ等の詩情ともまた違う、独自の清らかな作風。
この味は本当に小津安二郎監督なればこそ。
特筆すべきような事象がないのはレビュー対象としては曲者ですが、彼の作品に関してはそれこそが最善の視聴態度なのかもしれません。
どんな劇的な出来事でも私達の日常に普遍的にあって、私達はそれをあるがままに目にしてやればいいんだとでも言いたげな。
慈悲深い素朴な味わいが病みつきになります。