小津の描いた大映の名作、「浮草」の元の作品であるこちらのサイレント作品。
撮影技術、予算など59年のリメイク版と比べるのは不利であるはずなのだが、こちらの方は時代的にもリアリティあり、サイレントにしては重厚感のある仕上がり。
流石小津作品おなじみの飯田蝶子さん、坂元武さん、そして八雲恵美子さんがメインキャストとだけあり、サイレントならではの役者の技が光る。
特に八雲さんの目の演技が素晴らしい。
恨みと憂いと哀しみを帯びた女ならではの情念をいっぱいに詰め込んで、画面に彼女が見えない時でさえも念が見え隠れする。
リメイクでは雨音という音響の凄みで圧巻したあのシーンに相当するものは無かったが、淡々とした流れの中で見せる感情の抑揚が丁寧に表現されている作品であった。