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僕の、世界の中心は、君だ。のmaverickのレビュー・感想・評価

3.1
2005年の韓国映画。『世界の中心で、愛をさけぶ』の韓国リメイク版。主演は『猟奇的な彼女』のチャ・テヒョンと、ドラマ『太陽の末裔』のソン・ヘギョ。


これは駄作。号泣系だと思っていたのに全く泣けなかった。この作品に関しては日本版に軍配が上がる。自分はドラマ版が一番好きで、次に原作、そして映画版の順番になるのだが、いろいろと粗のある映画版で比べても日本の方が圧倒的に出来が良い。韓国はリメイクも上手く、『いま、会いにゆきます』も上々の出来だった。だから本作にも多少なりとも期待があったのだが。

原作の良さが全然活かせていない。設定はほぼ一緒で、細かい人物設定が違うくらいだ。高校生の二人の淡い恋の物語。青春真っただ中の二人に訪れる悲劇。白血病で亡くなってしまう彼女を、何年も何年もずっと思い続けている主人公の美しい話である。それを形だけはなぞっており、有名なシーンの数々を彷彿させるものの、それが全然心に響かない。原作の朔太郎と亜紀は、とにかく純粋で。朔太郎は馬鹿だけど一生懸命で、亜紀のためなら無我夢中で何でもやってあげたいという熱い想いを持った男。亜紀はみずみずしい可憐な美女で。元気いっぱいだけど、ふっと消えてしまいそうなはかなさも持ち合わせている。出会った二人はお互いが全て。「アキ」「サクちゃん」と呼び合う。そんな甘酸っぱい青春が打ち砕かれる。アキの白血病の発覚により加速度的に二人の物語は進んでゆく。どうしようもない現実の前ではあまりにも無力。それでもそれに抗い、刹那的な輝きを見せる若い二人。ここが二人にとっての世界の中心なのだと、そう感じさせる美しく感動的な物語なのに。韓国は難病もの、感動的なドラマが得意なはずなのに。これは制作側が原作の良さを全く分かっていない。日本でヒットしたからそれをちゃちゃっとリメイクしようと、そんな浅はかな考えだったのだろう。

主人公を演じたチャ・テヒョンは、『猟奇的な彼女』『僕の彼女を紹介します』の大ヒットで売れっ子の時期。だからかもしれないが、本作では手を抜いているかのような適当っぽい印象を受けた。どう見ても好きな女性を何十年も想い続けるような男には見えない。顔もぱんぱんだし見苦しく、何か作中で浮いてるんだよね。ヒロインを演じるソン・ヘギョは本作が映画デビュー。『秋の童話』『フルハウス』などのドラマで、彼女も人気爆発中の頃。初々しく美しい。チャ・テヒョンと比べると、彼女の熱意は伝わってはくる。ただ、この役には合わない。そもそも白血病で亡くなる感じが全然しないのだ。空港のシーンではメイクのおかげでそれっぽくも見えるが、原作が持つ消え入りそうなアキのはかなさというものが出せていない。事務所NGなのか本人が拒否したのかは分からないが、剃髪もしていない。せめて被り物くらいしろと言いたくなる。綾瀬はるかも長澤まさみも、二人ともこの役のために剃髪した。それくらい作品に情熱を注いでいたのだ。そういうものが本作からは伝わってこなかった。原作が好きなだけに、本作の軽薄さは許せなかったな。

韓国映画の昨今の成長ぶりは凄まじい。だが昔は日本の方が優れた作品を多く作っていたのだ。それが今や完全に逆転している。本作に見る駄目な要素は、そのまま今の日本映画やドラマに置き換えられる。本作を観て、なんだか日本映画みたいだなと感じた。それはそれで悲しいよね。


韓国版セカチューは駄作だった。ソン・ヘギョが初々しく美しいくらいかな見所は。日本版は本当に神がかっていたな。曲を聞くだけで泣けてくる。久々に大好きなドラマ版を観返してみたくなったよ。
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