140字プロレス鶴見辰吾ジラ

時をかける少女の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

時をかける少女(2006年製作の映画)
3.8
【青夏】

細田守と青と夏はイメージつけとして完璧に近いほどリンクする。彼のアニメーターとして放つアニメーション的な躍動の快楽と、女高生と恋、そして仲間とブレーキの効かぬ若さも本作には追い風として気持ちの良いほど吹いている。そしてダメ押しの如く加わる「タイムリープ」という誰もが感じる「時を戻せたら」という大いなる願いが重なるのだから映画としても物語としてもその熱量はエントロピーを凌駕するに申し分ない。いつ失うかわからないタイムリープ能力を何度も使う野球のシーンからある決定的な喪失に繋がる事故のシーンのアニメーション的躍動。この一連の事象が、快楽と喪失の逆位置に並ぶシーンは忘れがたい。「おまえタイムリープしてね?」から「未来で待ってる。」の青春という名の出逢い→秘密の共有→別れ、ヒロインの声優のスキルが冒頭からクライマックスへ確実に成長していくというオマケ的だが本質でもある目の離せなさ。

あの夏に
あのひとときに

跳躍することで時を越えるという躍動そのものの持つエネルギーは女子高生という瑞々しい象徴性をもって物語と寄り添うという下手したら本作限り(実際にそうだったが…)の勃興性を抱えた閉じた熱量を目の当たりにしたら誰もが宗教的にも呪い的にも、この快楽を再び…と願ってしまうわけなのだろう。