革芸之介

マッドボンバーの革芸之介のレビュー・感想・評価

マッドボンバー(1972年製作の映画)
3.9
70年代アメリカの犯罪アクション/ミステリーって独特の殺伐とした匂いと空気感が漂ってるんだよなぁ。本作もB級犯罪映画だが意外と地味なんだけど、まるでドン・シーゲルやリチャード・フライシャーの作品を思い起こさせる味わいがある。

本作を見た人は誰だって爆弾魔チャック・コナーズの「顔面」に言及したくなると思うが、本当にこの顔は素晴らしい。実際、この「顔面」が事件解決の手掛かりになるし、独特の骨格、口、眼鏡など顔のインパクトが強いのは確かだが、チャック・コナーズは「歩き方」も素晴らしく、この「歩行」も見どころだ。爆弾を入れた紙袋を抱え、ノソノソと歩くチャックコナーズの孤独感。学校、病院、ホテルなどいろいろと爆破させる場所があるのだが、その前に必ず歩いて犯行現場に到着するチャック・コナーズのシーンを挿入してくる。しかし終盤の犯行はバイクや車を使って現場に向かうので「歩行」の魅力もなくなり、犯行にも失敗する。

さらに強姦魔のネヴィル・ブランドも濃い。爆弾魔と強姦魔が共演。事件を捜査する刑事のヴィンセント・エドワーズも典型的な70年代の刑事アクションに出てくる、やさぐれたアウトロー刑事。

強姦魔ネヴィル・ブランドが奥さんのヌード映像を見ながら自慰行為している場面は、紙袋を抱えたチャック・コナーズの「歩行」シーンとカットバックされ、不穏な空気を醸し出し絶頂と爆破を同時に画面に刻み込む奇妙で異常な迷場面。いろいろツッコミ所は満載だがそれに言及するのも野暮な気がする。

悲しさと寂しさの余韻を残す前に、感傷的にならず潔く映画を終わらせてしまう簡潔で冷酷なラストシーンも必見。
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