それは前の日から始まる。
いよいよ明日だと思うと気持ちが高ぶる。
どんな作品なんだろうって想像する。
普段使うことのない銀座駅を降りて、
前売り券を持って映画館に向かう。
確か2001年の冬。もうおぼろげな記憶。
確か映画館はシネスイッチ銀座。
入場を待つ人で混んでいるフロア。
それでもみんな静かにその瞬間を
待っている。期待。高揚。そして入場。
映画が始まる。ある場面では、
スクリーンいっぱいにビリーが
街中を弾むように踊る。
また別の場面では、今度はスクリーンから
飛び出さんばかりの躍動感でビリーは踊る。
また別の場面では、父親がビリーと
同じように街中を…
愛に溢れた映画。たくさん愛。とても。
父親の慟哭のような叫びが劇場いっぱいに
響く。兄の不器用な愛。祖母の深い愛。
親友との胸が締め付けられる愛。
大きなスクリーンでさえ溢れる愛。
鼻をすする音が、遠慮がちに右から左から
聞こえてくる。心をじんわりさせながら
やっぱり映画館っていいなって僕は思う。
その鼻をすする音さえも、この映画を
特別なものにする。大切なものにする。
ビリー・エリオット。やっぱり特別な一作です。