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リトル・ダンサーのdeenityのレビュー・感想・評価

リトル・ダンサー(2000年製作の映画)
3.5
アカデミー外国作品賞を受賞した本作。少年ビリーがバレエに没頭していく、という話。

ただ、そこに描かれるのはバレエ馬鹿な少年というわけではない。現在でもバレエというもの自体がどうしても女性のやる競技というイメージが強いのもあるのだが、この当時も然りで、父や兄の反対を受けても尚バレエをやりたいと願うビリー。しかし、見ればわかるが父親も兄も頑固一徹で男らしいというか血の気が多いというか、「バレエなんて女のやるものだ」という考え方がブレない。父は炭鉱夫であり、兄と共にストライキの真っ最中。ビリーにはボクシングを習わせ、典型的な男らしい子に育てようとしているわけだ。

一方ビリーはそんな中で見出したバレエの楽しさに惹かれていく。バレずにこっそりと続けようとするし、父親に反抗したりもするが、結局は父親の様子を気にしてしまう。
馬鹿親だと非難したくもなるのだが、意外と子どものことを思っている部分は見え隠れするからこそ一概に否定もできず、しかし頭が固すぎるが故にビリーが可哀想に思えて仕方ない。

そんな父親を納得させるダンスシーン。不思議と心にグッとくるダンスだった。正直ダンスとかって技術がどうとか全くわからないし、見るのも強いて言えばフィギュアくらい。でも上手いか下手かもわからないけど感動する演技ってあると思う。ちょうどフィギュアで、引退宣言をしていた浅田真央の演技。終わった瞬間に涙が止めどなく溢れてきていたシーンが印象的だったが、ちょうどそんな感じだ。なんか心に響くものがある。感動させるものがある。
ビリーのそれもその類。きっと父親も上手い下手はわからない。才能の有無もわからない。バレエを男子がやるなんて、という偏見もある。言うことを聞かない息子への憤りもある。それでもきっとあのダンスを見て感動したはずだ。息子が誇らしく思えたはずだ。夢を見させてあげたいと思ったはずだ。そんなダンスを見せたビリーの演技を賞賛したい。

親子の愛を感じるハートウォーミングであり、夢のある素晴らしい作品だった。
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