tarupon

リトル・ダンサーのtaruponのレビュー・感想・評価

リトル・ダンサー(2000年製作の映画)
4.4
昨年、日本版の「ビリー・エリオット」のミュージカルを見てとても良かったので、もととなった映画を見てみたいと思っていたものでやっと見ました。
1984年のサッチャー政権下での炭鉱労働者のストで閉塞感漂うダラム、そこで炭鉱労働者の家庭のビリーが、ふとしたきっかけでバレエに目覚め、町のバレエ教師に才能を見出され、父兄はじめ周りの炭鉱の男たちからは「男がバレエ」なんてという目で見られながら、ダンスに対する熱意に家族や周囲の応援を得てロイヤルバレエ団のオーディションを受け新しい世界に踏み出す物語。
「男だったら、フットボールかボクシングかレスリングだろう」という性別に由来する偏見、父も兄も炭鉱労働者でそれ以外の職業選択、そもそもダラムの街を出ること自体が想定されていない人生の中で、踊りたい、自分のうちにあるものを爆発させたいという気持ちが、途中くじけそうになりながらも周囲を動かしていく様は涙がとまらない。



以下、がっつりネタバレになります。



特に、ビリーがクリスマスの暗いジムの中で親友のマイケルとダンスを踊り、さらに父の前で踊るシーン、息子の才能を認め、息子の背中を押したいと思った父がビリーのために信念をまげスト破りをするシーン とにかく後半は父とビリー、そして兄のトニーもおばあちゃんも加えた家族の様子から目が離せない。
ロイヤルバレエ学校の合否の知らせのシーンとか、家族はまるでコメディのようだし、ビリーの様子はすごくリアルでくすっと笑えて泣ける。

前半だけれど、母の手紙を丸暗記しているところとかも、切ない。

最後に、15年後のビリーが白鳥の湖を踊るシーン。この15年後はアダム・クーパーがやっていて。
アダム・クーパーは名前を聞いたことがある程度だったのだが、ダンスシーンは短いものの迫力がすごい。
それに、白鳥の湖でありながら、男性の白鳥?ということも気になり、見終わってちょっと調べたところ、アダム・クーパーはロイヤル・バレエのプリンシパルでありながら、マシュー・ボーン演出の「白鳥の湖」にも出ており、これは男性同性愛者の物語としてつくられたものなんだそうで。
というか、このビリーが最後に踊るのは、完全にマシュー・オズボーン版の白鳥だよね。ものすごくかっこよくステキだったので、このマシュー・オズボーン版の白鳥が見てみたい!って思いました。
更に、この舞台を父、兄とともに小さい頃から女装癖があったマイケルが、大人になりゲイとして、観客としてみていて。
ビリーもいろいろな壁を乗り越えてあの位置にたったけれど、マイケルも小さな狭い街から踏み出し自由になったのだなと感じました。
tarupon

tarupon