あーさん

モモのあーさんのレビュー・感想・評価

モモ(1986年製作の映画)
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ドイツの児童文学者ミヒャエル・エンデの原作は、高校生の頃に読んだ。
"時間泥棒"という概念は、当時の自分にとってはとても新鮮だったのを覚えている。

かの"ネバーエンディング・ストーリー"もエンデの作品だが、制作者と意思疎通が上手くいかなかった苦い経験から、今作は監督、キャスト、音楽、衣装に至るまで、エンデの意向に沿うようなメンバーが集結。
納得のいく作品に仕上がったという。

映像化していることも知らなかったが、少し前にNHKの"100分で名著"で取り上げられていて、映画の方も観てみたいなと思ったのが鑑賞のきっかけ。

…とここまで書いて、だいぶ間が空いてのレビュー。


このファンタジーを纏った物語を深掘りしていくと、とても深い心理学や哲学的な啓示を私達にもたらしてくれるのだが、シンプルな感想としては、必要以上に慌てず急がず、今この時を、ここにいる人達との時間を大切に♪
そんな心持ちにさせられた。。

オープニングからして面白い設定になっていて、とてもエンデらしい。原作ではあとがきに出てくるこのシーンは、この物語の普遍性について改めて考えさせられ、再鑑賞した時に、この事だったのか、、とハッとさせられる。

主人公モモは、身寄りのない少女。掃除夫の優しいベッポやいつもギターを弾いている音楽好きのジジ、気の良い町の人々(皆が集うレストランのニコラ、床屋のフージe.t.c.)と楽しく平和に暮らしていたが、ある時を境に灰色の男たち(時間泥棒)が現れ、町の様子が一変する。どこかギスギスして能率ばかり気にする余裕のない世界に、モモは戸惑う。
そんな時、カシオペイアというカメの甲羅のメッセージに導かれ、不思議な"時間の管理人"マイスター・ホラの所へ辿り着くモモ。
そこで、彼女は今何が起こっているのかを知らされ、大切なミッションを託される。
果たして、モモは灰色の男たちとどうやって対峙するのか?
世界は元通りになるのか?…

懐かしい80年代ぽい音楽や演出が少々取って付けたように感じるところもあるけれど、原作に忠実に少しオリジナルなエピソードも加えながら、大切なことをシンプルなメッセージとしてきちんと届けてくれる良作だと感じた。
モモ役のラダスト・ボーケルちゃんがとても可愛らしく、脇を固める俳優陣もしっかりとした演技派なので、安心して観ていられる。
監督のヨハネス・シャーフ氏は後にオペラも手がけるドイツの演出家で、映画監督としてもパルムドールにノミネートされたこともある実力派。しっかりとテーマがブレない所はさすが♪
何気に灰色の男たちも悪役でありながら、お揃いのグレーのスーツがなかなかダンディーな雰囲気を纏っていて目が離せない。大切なことに気づかせてくれる存在としても、この物語になくてはならない。そして、マイスター・ホラの重鎮感は納得!
誰かが悩んでいたら、いつもモモが"Why?"と聞いてくれ、話すだけでいつの間にか解決してしまう所なんかも素敵だなぁ。
私も、モモのようになれたら。。


何だか少し状況は違えど、モモ達の陥ったピンチは、コロナ禍の今の世の中と被るような気がした。
エンデが指摘した通りだ。
戦争だったり、災害だったり、疫病だったり、、
今も私達の生活を脅かす"灰色の男たち"のような試練は、常に訪れる。それには終わりがない。
その度に、試される私達。

本当に大事なものを見逃さないように、見落とさないように、見失わないように。。

モモみたいに何のしがらみもない真っ直ぐな心で、世の中を見通せる人がいなくなりませんように。
自分もそんな人でいられますように。。


こんな時だからこそ、多くの人々に今作を観てほしいと思う。





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今作を観たのが8月末。
私事になりますが、 8/27でFilmarks5周年を迎えた所でした。
すぐレビューしようと思いながら日が経ってしまったのは、日々気にしなければならない事がたくさん出て来て、なかなか映画に気持ちがいかなかったからです。
思えば5年前、上の息子が子離れできない?私を心配して、こんなアプリがあるよ〜と教えてくれたのをきっかけに始め、色々あったけれど3年程でキリのいいところでやめようと思いつつ、4年、5年と続けられてきたのは、段々と映画の魅力にはハマっていったこともあれば、Filmarksで出会った素敵な方々とのやりとりが楽しくてたまらなかったから、、そのどちらもですね♪(息子達の反抗期や不登校の日々を乗り越えられたのも、映画の力+ここで出会った皆さんの励ましも大きいです❗️本当にありがとうございました🙇‍♀️)
5年頑張ったからそろそろ、、という気持ちもあり、少し休憩したいな、と。決して映画に飽きたのではないのですが、アウトプットするのに少し疲れてしまったのが本音です。
この数ヶ月で色んなことがありました。コロナ禍に加えて未来ある若い人の死、ここに来ての急な夫の転勤(単身赴任)、、そのどれもが少しずつ私の心にボディブローのように効いてきています。。
もう一つ、闘病中の父の読書好きが今も止まらなくて、私もお付き合いで本を読むことにハマっているのもあり、なかなかレビューまで書く時間が取れません。
今はきっと家族との時間が一番大切な時だから、ゆったりとした気持ちでいたい、心の通うひとときを少しも逃してはいけない、と思うのです。自分から発信するよりも、内省して自分の心に寄り添う時期というのかな。
いつかまた、'映画の日々'に戻ってくることを願いつつ、しばし休憩もアリかな?と思っています。
とはいえ、時間のある時にコメントではビシバシお邪魔しようと思っているので笑、今まで通りよろしくお願いします😊

いつもながら、長々と失礼しましたm(_ _)m

たくさんの感謝と共に♪
あーさん

あーさん