OASIS

コンラック先生のOASISのレビュー・感想・評価

コンラック先生(1974年製作の映画)
3.8
孤島にある黒人の生徒のみの小学校へやって来た若い教師コンロイと、児童たちとの触れ合いを描いた映画。

「お前達はノロマだ」
「やはり黒人は鞭で厳しく教えないと駄目」
「白人を喜ばせて上手く世間を渡るのよ」と校長のスコット夫人は言う。
感覚が麻痺しているというか、尊厳や誇りが輝きを失っているというか。
長年虐げられ続けて来た者からすると誰かの足下にしか居場所が無いというそんな状況が当たり前の日常になり、ストックホルム症候群のごとくある種の悦びを覚えるようにまでなってしまうものかなのかと。
そう思うと、憎むべきはずの校長が時代に取り残された遺物のように見えて憐れみや寂しさを誘った。

ABCも言えず、自分の名前すら読み書き出来ない児童たちにコンロイは向き合って行く。
初めは複雑な「コンロイ」を上手く発音出来ず「コンラック」としか言えない子供達。
彼らが海を見た事が無いと言えば海へ行き、映画を観た事が無いと言えば授業で映画を観せ。
コンロイに敵意を剥き出しにして来る少女を無理矢理海へぶん投げたりと、ちょっとやり過ぎな部分も見受けられるが文字通り体当たりで生徒達とぶつかって行く姿はジョン・ヴォイトの熱血な好演もあり清々しくて爽快である。

コンロイが解雇されそうになると、生徒や村人達はストライキを敢行。
その甲斐虚しく学校を去ることになるが、最後の瞬間まで授業を続ける。
あの自分の名前が言えなかった子供達が、大統領の名前を覚えるまでになり...。
彼の子供達に対する態度が最後までフランク過ぎるので感情が爆発して感動が一気に押し寄せてくるような激しさは無いが、その間には確かに魂の授業で繋がった絆を感じられて良かった。

白人と黒人が同じ町で共存して行く道を見つけてめでたしめでたしとはならず、お互いが川=壁で隔てられそれが分かたれて行くというラストシーンが一抹の寂しさを残す映画だった。
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