アキラナウェイ

散歩する惑星のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

散歩する惑星(2000年製作の映画)
3.7
「ホモ・サピエンスの涙」で一目惚れした、スウェーデンの巨匠ロイ・アンダーソン監督作品。

うんうん、これこれ、この感じ。

シュール。
とてつもなくシュール。

構想に20年、撮影に4年を費やしたって?こんな事を20年も考えていた監督の頭の中どうなってんのよ。

とある惑星で—— 。

突如リストラされるサラリーマン、路上で暴行される男性、人体切断マジックの失敗で大怪我を負った観客、火事で店が全焼した家具屋、その長男は心の病で入院中…。懸命に生きているのに、人生がうまくいかない人達。そんな彼らは、此処ではない何処かを目指して、空港に殺到する—— 。

ツイていない人達のツイていない日常が、短編の様に紡ぎ合わされた集合体。

「ホモ・サピエンスの涙」に比べれば、まだストーリー性があるので面白いかも。

固定カメラで映し出される映像は、構図、奥行き、人物配置が緻密に計算され、ロイ・アンダーソンの美学を感じる。

好きだなぁ。このセンス。

彼の作品は、娯楽としてより芸術として捉えるべし。唯一無二の映像センスにただ酔い痴れる至福の時。

何の宗教儀式なのか、民衆の為に崖から突き落とされて犠牲になる少女。スーツケースを山積みにしてカートに乗せ、空港に押し寄せて、何処かへ逃げようとする群衆達。この2つのシーンは、鳥肌モノ。

歯車がどんどん狂って、
終盤にかけて、カオスの渦に巻き込まれる。

ワンシーンワンカットで紡ぎ出し、ブラックユーモアという名の調味料を振り掛けられた、とある惑星の物語はとても他人事とは思えない。

ミニチュアや騙し絵を使って、摩訶不思議ワールドに誘うロイ・アンダーソンにまたもや感服。

好き。