「ホモ・サピエンスの涙」で一目惚れした、スウェーデンの巨匠ロイ・アンダーソン監督作品。
うんうん、これこれ、この感じ。
シュール。
とてつもなくシュール。
構想に20年、撮影に4年を費やしたって?こんな事を20年も考えていた監督の頭の中どうなってんのよ。
とある惑星で—— 。
突如リストラされるサラリーマン、路上で暴行される男性、人体切断マジックの失敗で大怪我を負った観客、火事で店が全焼した家具屋、その長男は心の病で入院中…。懸命に生きているのに、人生がうまくいかない人達。そんな彼らは、此処ではない何処かを目指して、空港に殺到する—— 。
ツイていない人達のツイていない日常が、短編の様に紡ぎ合わされた集合体。
「ホモ・サピエンスの涙」に比べれば、まだストーリー性があるので面白いかも。
固定カメラで映し出される映像は、構図、奥行き、人物配置が緻密に計算され、ロイ・アンダーソンの美学を感じる。
好きだなぁ。このセンス。
彼の作品は、娯楽としてより芸術として捉えるべし。唯一無二の映像センスにただ酔い痴れる至福の時。
何の宗教儀式なのか、民衆の為に崖から突き落とされて犠牲になる少女。スーツケースを山積みにしてカートに乗せ、空港に押し寄せて、何処かへ逃げようとする群衆達。この2つのシーンは、鳥肌モノ。
歯車がどんどん狂って、
終盤にかけて、カオスの渦に巻き込まれる。
ワンシーンワンカットで紡ぎ出し、ブラックユーモアという名の調味料を振り掛けられた、とある惑星の物語はとても他人事とは思えない。
ミニチュアや騙し絵を使って、摩訶不思議ワールドに誘うロイ・アンダーソンにまたもや感服。
好き。