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散歩する惑星のryodanのレビュー・感想・評価

散歩する惑星(2000年製作の映画)
5.0
2017-01-04

R・アンダーソン監督作。
いろいろ考えさせられました。画の中で遊ぶのは、アマチュアの醍醐味。それこそ監督の思いが伝わる手っ取り早い方法で、ギャラの高い俳優を拘束しなくても、少ない予算で画全体に芝居させる方が直接的だから伝わる。奇しくも昨日の「惑星ソラリス」も同じ手法でした。でも、アマチュアと決定的に違うのは、画作りだけで終わらない作家なりのメッセージが要所要所に散りばめられていること。今作も、形骸化された宗教や資本主義の悲哀を徹底的にこき下ろしている。キリスト教それ自身のタブーや、宗教的な価値観の押し売りだったり、一握りの富裕層への反発、停滞する社会への不満だったり。そして人間賛歌も忘れない。宗教より富や名誉より、何よりも美しいのが人間なんだって。そして過去を清算しないで、共に生きるということ。当たり前ですが、プロとアマチュアの差ですね。こんなサブいテーマを盛り込んできても、全く説教臭くならない。逆に映える感じかな。「慈しむべきは座らされる人々」って、深いですね。座らされるのはいつだって立場が弱い人達。どんな境遇だって、どんな階層だって。喜劇と悲劇は表裏一体。コトの顛末を見て笑っている自分に、その瞬間残酷さを感じました。でもだんだん笑えなくなってくるんですよね。喜劇で入って悲劇で終わる感じ。やっぱスゴイですよ。
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