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TATTOO「刺青」ありのLATESHOWのレビュー・感想・評価

TATTOO「刺青」あり(1982年製作の映画)
3.8
ほんまもんの男とはなんぞや。

明日やってやるが口癖になってると
この映画にハートをバキバキに砕かれるだろう。
チッポケで中途半端な刺青を
見せびらかして縋りつき
「世界は俺が回してんねん!」
そう高らかにほざく身の程知らず。
なんかやらかしてやる!と
ギラつきながらも
虚栄心から脱却できずもがく様の
熱気が冷笑を吹き飛ばす。
女に暴力振るうヒモのクソ野郎なんだよ。
ナルシストのマザコンで口先だけなんだよ。
短絡的直情傾向のくせして
金の貸し借りだけは異常にこだわる
屈折した男なんだよ。
子を溺愛する母親が息子の刺青を撫でて
おまじないをとなえるのが
呪縛にも慰めにも思えるんだよ。

宇崎竜童の
30までに何者かになりたくて
卑小な己から必死に目を逸らし
買い物で常に万札を出しては
「釣りはいらん」と大物ぶる姿。
同情など一切出来なくとも
鑑賞後は只ならぬ焦燥が
爪痕をくっきり残してる。
ストップモーションから白黒になる
ラストのショットが
まだ何者でもない人間にとっては
悔しいくらいカッコいい。
高橋恵子が土砂降りの中
スローモーで唾を吐くシーンが
遂に見限られた人間にとっては
悲しいほどに艶かしい。
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