みんと

ウンベルトDのみんとのレビュー・感想・評価

ウンベルトD(1952年製作の映画)
4.2
ネオレアリズモの傑作を鑑賞。

コレはもう反則レベルの名作、ここまでワンコの名演見せられたら感動しない訳ないし泣けない訳ない。ましてや我が家にも毛むくじゃらワンコが居る身としては尚更。

『自転車泥棒』の監督作品と言うことで鑑賞前から不条理を覚悟してた。確かに現実的でいたたまれないんだけど、正直 序盤なんかは頑固で気難しそうなウンベルトに若干の嫌悪感すら感じてた。
…なのに気付けば寄り添って観てた。

長年公務員として真面目に働き、今は年金暮らしの老人ウンベルト。しかし敗戦の影響で生活は困窮し、家賃も滞納。家族も無く病気がちで唯一愛犬フライクだけが心の拠り所だった、、、

何処か他人事とは思えない年金問題はすんなり我が国にも置き換えられ、自分自身の将来とも照らし合わせる事が出来る切実な問題として感じられる。

ただ厳しい貧困を描き何処にも救済を望めない不条理ムービーの一方でワンちゃんムービーと言って良いくらいお利口犬フライクの名演ぶりが微笑ましくて愛らしい。主役級の演技を見せたり、自然に映り込んだり…気付けば全てのシーンでフライクの姿を探してた。

フライクがただ人間を癒すペット、或いは忠犬であるだけではなく、人間と大きく異なる本能を持つ“動物”であることを突きつけられたあのシーンでは心が大きく揺さぶられ、今作のキモとも言える印象的で感動的名シーンだった。

そして解釈を委ねられたラストシーンでは、相棒フライクさえ居れば、フライクのお利口さんぶりをもってすれば必ずや希望が見いだせると信じたい。

長い余韻の後、はたと我に返り1番に浮かんだのは、、、
見事に準主役を演じきったフライクのご褒美は何だったんだろう?
…余計な興味が生まれたのはきっと私だけに違いない。

因みに我が家のワンコもバーンッ!と言葉の一撃で倒れる技を1週間で習得出来るレベルの賢さ(正確にはずる賢さ)は持ち合わせてます。笑
みんと

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