2021 年 33 本目
カトリーヌ・ドヌーヴの脚を撮りたかったんですね…!!
フランスを代表する脚フェチ(として私が認識している)フランソワ・トリュフォー最大のヒット作品。ナチス・ドイツ占領下のパリを舞台に、当局の抑圧や御用評論家に負けず自分たちの演目をやり抜いた劇団一座のお話。
ナチス占領下のパリ。女優のマリオン・シュタイナー(カトリーヌ・ドヌーヴ)は、モンマルトル劇場で座長を務めていた。この劇団、本来はマリオンの夫であり演出家のルカ・シュタイナーが座長だった。しかしルカはユダヤ人であり、ナチスの迫害を恐れて国外へ逃亡していたのである。よって今は、妻のマリオンが代理で一座を仕切っている。
ということになっているのだが、しかしなんと、ルカは劇場の地下にこっそり暮らしていた。その事実を知るのはマリオンのみ。彼女は夜な夜な、地下の夫のもとへ食事や着替えなどを持っていく……という、何だか『パラサイト』を思わせる展開。
バレるかバレないかサスペンスは当然のように入るのだが、大人の三角関係、批評のフェアネス、そしてカトリーヌ・ドヌーヴの美脚など、いろいろな要素が絡んでくる。とはいえもっとも重要なのは「演目をつつがなく見せること」、つまり “Show must go on” の精神なのかもしれない。舞台裏がぐだぐだでも、批評家がクソでも、ゲシュタポが恐ろしくても、客にはきっちり芝居を見せることですべてが昇華されるのである。
そして劇中劇の構造を生かしたラストシーン。芝居を作ることの喜びが一心に体現されているようで、とても感動的だった。個人的には最も好きなトリュフォー作品。