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終電車のsonozyのレビュー・感想・評価

終電車(1980年製作の映画)
4.0
1980年、トリュフォー監督 晩年の作品。
セザール賞主要十部門!を受賞したトリュフォー最大のヒット作だったんですね。知らなかった。

トリュフォーがかつて(1969年〜)2年ほど同棲していたカトリーヌ・ドヌーヴのために作ったという本作。

シャンソン「サンジャンの私の恋人(リュシエンヌ・ドリール)」♪が流れるオープニングからの状況説明。
1942年、第二次大戦中のナチ占領下のパリ。独軍がフランスの北半分を占領。
夜11時以降は外出禁止で、終電車に乗り遅れないよう走る人々。
(映画のタイトル『終電車』が出てくるのはここだけです)

こんな状況下ですが、映画や演劇を楽しむのが市民の唯一の楽しみだった。

モンパルナス劇場の主演女優マリオンがカトリーヌ・ドヌーヴ。
座長・演出家でユダヤ人の夫のルカはユダヤ人狩りから逃れるため南米に逃亡中(という事になっていますが..)。

夫の代りに劇場運営を切り盛りし、舞台もこなす、凛と美しいマリオン。
彼女は、毎晩ひとり地下室に向かう。実は夫ルカは劇場の地下に潜伏していたのだ。
ルカは気がおかしくなりそうな地下室生活に耐えつつ、配管から劇場の音を聞き、新作『消えた女』の演出アドバイスもマリオンにする。

マリオンの相手役は、怪奇劇場(笑;)から来た、女性を見れば声をかけるナンパ師のベルナール(ジェラール・ドパルデュー)。
二人の関係は良いとは言えなかったが、初演は拍手喝采を受け大成功。

その打ち上げ中、作品について酷評したドイツ軍の御用批評家ダクシアを見つけたベルナールは激昂し殴りかかってしまう。
この事態に怒ったマリオンとベルナールの関係は更に悪化。

批評家ダクシアは劇場に関するある秘密を嗅ぎつけ策略を練る・・・
ベルナールはレジスタンス運動に専念したいと劇場を去ることになり・・・

ラストの鮮やかなオチも楽しい。

撮影監督ネストール・アルメンドロスによるアンバーで暗めの映像。
ラジオなどから流れる当時の音楽。

マリオンも劇場に集まる客も優雅なファッションで過ごしていて、当時こんな状況だったのかはやや疑問ですが、
戦時下でも、劇場を輝かせた人たちと、終電車を気にしながら劇場に足を運んで楽しんだ人々を描いた、トリュフォーならではの愛を感じました。
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