Satoshi

追悼のざわめきのSatoshiのレビュー・感想・評価

追悼のざわめき(1988年製作の映画)
4.7
前半はどうしようもなく退屈だった。絵が汚いしセリフは拙いし、下手くそな暴力衝動とか鬱憤をなすりつけられるみたいで。
でも何だろうな。
中盤のルンペンが出てくるくらいから前のめりな自分に気が付く。
俺が大阪出身だからか、映像で出てくる昔の街並みになんか郷愁を感じる。綺麗な絵はほとんど出てこない。というか地面の泥とか川底のうねうね汚い所とか、汚れ、埃、道の隅っこみたいな映画ではほとんど出てこないような汚い街並みなのに、子供のころにそれを眼の端に見ていた記憶がよぎる。
音もそのまんまで、車や電車、喧騒も懐かしい。
3人の男と1人の女がとてもとても哀れで、行き過ぎた純心で狂ってしまっている。汚い画の中でだんだんとそれがある種の美しさにも見える。
妹を愛し、殺してしまって、供養のために妹を食べる若い兄。
マネキンの中に殺した女性の臓腑を埋めて、子供を創る男。
言葉を無くし、女性の股に似た木にパンティを履かせて引きずりながら町をさ迷う老いたルンペン。
それらが後半でゆるく交わりながらも同一人物のように見えた。ひたすら無くした女を求めてさ迷う亡霊のような。
泣けるなあ。ときどき入る美しいピアノも泣ける。
男たちの中を小人症の女が歩く。
奇形に対する嘲笑が凄く強調されてる中、女はその身体ながらにどこまでも女で、下品にエロい。
男の幻想を葬り去っていく女。すれ違う人はみんな女から目をそらしたり笑ったりしながら逃げていく。
さ迷う男とどこにも行けない女。
ひたすら孤独なまま映画が終わって、気が付けばすげえ胸が痛かった。