イチロヲ

追悼のざわめきのイチロヲのレビュー・感想・評価

追悼のざわめき(1988年製作の映画)
4.0
大阪の釜ヶ崎で放浪生活を続けている青年が、本物の子宮を埋め込んだマネキンに癒やしを求めていく。寺山修司のフォロワーが製作している、ヒューマン・ドラマ。

人間が抱える孤独感や疎外感、ひいては鬱屈した感情の爆発を、厭世気分マックス状態で描いている作品。奇異な目で見られがちな「一風変わった人」にスポットライトを当てながら、前衛スタイルの不条理劇を綴っていく。

マネキンを拵えるニヒリストの青年、行き場を失っている10代の兄妹、虐げられている小人症の兄妹、股間の形をした切り株を愛でている乞食などが、各々の視点からドラマを展開。総じて、男性視点の女性コンプレックスを主体とした内容になっている。

完璧な答えを探すのではなく、自分の価値観をもとにした、自分なりの答えを「感覚」で捉えるための作品。田中登監督「(秘)色情めす市場」の初期タイトル「受胎告知」を意識しながら、2本立てを想起すると、さらに趣が増す。
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