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追悼のざわめきのHKのレビュー・感想・評価

追悼のざわめき(1988年製作の映画)
3.7
松井良彦監督による寺山修司をリスペクトしたアングラ映画。キャストは佐野和宏などなど

大阪のドヤ街を舞台に、マネキンしか愛せない性犯罪者や、戦争で被爆して知的障害になってしまった人々、小人症の人々などなど、社会から取り残された人々を取り扱う。取り残されたゆえに、歪んでしまった愛の形に発展するが、それも空しく最後には全員の愛が報われずに終わってしまう悲劇を、モノクロ撮影で淡々と冷笑的に描く。

純粋な愛の形というものは、必ずとして一つの形態とは限らない。しかしながら、生物的に報われる愛の形はたった一つしかない。ゆえに、人々はジレンマを抱え、その性的倒錯からくるストレスを発散するために社会にキバを向ける。

この映画の登場人物も、ほとんどの人間が生まれながらの性的嗜好、そして身体的要因、貧困などの社会的要因など様々な原因で、社会から疎外されて一般的な恋愛をすることができない存在である。一瞬のエクスタシーを得るために、人間としては犯してはいけない禁忌を平然と行う。

この過程を見せる映画の存在はやはり相当なものであろう。この映画で得られる一種の快楽というのは、もっと露悪的なものであり、特定の人間にとっては本当に関係の無い存在を扱っているのかもしれない。性善説に基づいて生きている人間はこの映画を観て一体何を思うのだろうか。

劇中で行われる見せ場はエログロ、スカトロ何でもありの状態である。アングラ映画ゆえに可能な見せ方ではあるが、上限がない分、禁忌的な映像が立て続けに繰り広げられてそれが映画を観ていくうちにマンネリ化してしまう部分が嫌なのだが、寺山修司リスペクトのせいかそのような所は観られず、終盤に行くにつれて段々と悲惨な展開になっていくためそこがとても面白かった。

エログロは大丈夫なのだが、スカトロが大の苦手な私は、序盤のマネキンに鳥の分が落ちたのを、主人公が舐め取るシーンを見るだけで吐き気を催した。他にも下水道の腐敗物むんむんの汚らしさがより嫌悪感を駆り立てる。それを目的とした映画なのだから、見事な出来栄えである。

いずれにせよ、観れて良かったと思います。あんな小人の俳優さんて実際にいるんでしょうかね。
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