ろく

復讐 THE REVENGE 消えない傷痕のろくのレビュー・感想・評価

4.2
哀川&黒沢ノワール。もうなんでこんな映画なのに好きなんだろう。

「蛇の道」や「蜘蛛の瞳」さらには「復讐~運命の訪問者」と展開はほぼ同じなの。何を考えているかわからない哀川がいつも中心にいていつのまにか周りに死体が積まれる。これといった格闘シーンもあるわけでないし激昂するわけでもない。その静かさが逆に怖いのよ~。

とにかく哀川の存在感ね。役者っていろんな演技をするはずなんだけど哀川翔はそんなのできないの。いつも淡々とちょっとハスキーな声で語るだけ。まあ大根ですよ。でもこの「大根」が凄いの。だって中身が全く読めないんだもん。空っぽなの?って思ってしまうくらいに読めない。

そしていつのまにかその空っぽに自分が引き寄せられてしまう感じまでしてしまうの。怖いんだよ。あの目で見られたらそのまま自分をなくしてしまいそうな感じ。

そしてその良さをもっとも上手に引き出すのが黒沢清。いやーこのタッグはすごい。いつも引きで撮るの。殺すときなんかとにかく引いてあっけなく死ぬ。「死ぬ」ことをドラマチックにしないこと。だって黒沢にとって「死」は当たり前だから。当たりまえだからこそあっけなく殺す/殺されるのよ。その無常感ね。

だから倫理的でない。もやもやする。でも惡でもない。どっちでもないからこの映画は怖いんだよ。

だって「空っぽ」なのは一番怖いじゃないか。
ろく

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