愛鳥家ハチ

トップガンの愛鳥家ハチのレビュー・感想・評価

トップガン(1986年製作の映画)
3.5
トム・クルーズの出世作。精鋭の集う航空戦訓練学校である通称"トップガン"を舞台とした航空アクション・ラブロマンス映画。本作公開後はアメリカ海軍への志願者が劇的に増加し(注1)、日本でも本作に憧れて戦闘機パイロットとなった女性が現れるなど(注2)、本作の影響力の程が窺えます。なるほど確かに空中戦はスリリングであり、若かりし日のトム・クルーズは超絶美青年で格好良過ぎます。登場人物の感情の機微を読み取る間もなく、ぽーっと眺めていたらエンドロールに到達していました…。

ーーコールサイン
 まず、トム・クルーズ演ずるピート・ミッチェルのコールサインは、次作の副題ともなっている"Maverick(マーヴェリック)"です。Maverickとは、英和辞典では、「(政治家・芸術家などの)無所属の人、異端者、『一匹おおかみ』」を指すとされていますが(注3)、他方、英英辞典では、「独立したやり方で考え、行動する者」であり、「しばしば通常もしくは期待されたやり方とは異なった振る舞いをする者」と定義されています(注4)。どちらかといえば、英和辞典の"異端者"、"一匹狼"よりは、"独立して考え、行動する者"という英英辞典の表現の方がよりキャラクターに即していると思われます。上意下達の指揮命令系統が絶対である軍隊組織において、命令違反も辞さない向こう見ずな行動を取り得るピートは、まさに軍にとって"Maverick"な存在であるといえましょう。"アイスマン"もそうですが、本作ではコールサインがパイロットの性質をストレートに表現していたのが印象的でした。

ーー楽曲
 また、本作には80年代を代表する洋楽が見事に溶け込んでいます。特にKenny Logginsの"Danger Zone"が秀逸で、イントロが鳴り響いた瞬間からテンションのゲージが上がって行くのが分かる程です。Berlinの"Take My Breath Away (愛は吐息のように)"も楽曲単独でのクオリティが高いにもかかわらず主張し過ぎず、ラブロマンスの場面と調和を保っていました。洋楽チャートを席巻したきわめて優れた楽曲に彩られ、主演俳優を一躍スターダムに押し上げることとなった作品であるという意味では、本作はジョン・トラボルタの『サタデーナイトフィーバー』と同様であるといえそうです。

ーー総評
 本作は、空中・地上での様々な出来事を通して主人公が鍛えられていく様を見届ける成長譚であり、トム・クルーズの魅力を再発見するにはうってつけの作品でした。洋楽のプロモーション映像を見る感覚で、気負わずに鑑賞できるのも本作の長所だと思います。

(注1) https://www.sankei.com/smp/world/news/180604/wor1806040009-s1.html (2020/02/23閲覧)
(注2) https://www.asahi.com/sp/articles/ASL8N644BL8NUTIL031.html (2020/02/23閲覧)
(注3) https://ejje.weblio.jp/content/maverick (2020/02/23閲覧)
(注4) https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/maverick (2020/02/23閲覧)
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