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春夏秋冬そして春のwasewaseのレビュー・感想・評価

春夏秋冬そして春(2003年製作の映画)
3.0
その独特の価値観で、様々な映像美を奏でるキム・ギドク監督が、水上の美しい四季の移ろいの中で、業を背負って生きなければならない人間という生き物を描き出した作品。私には非常に哲学的な作品に見えました。これもまた難しい映画ですね(苦笑)。

 "人の人生は大きな石を、山の頂上に向かって転がして押し上げ続けて行くようなものだ。"「異邦人」で有名なフランスの小説家・評論家アルベール・カミュの作品に「シーシュポスの神話 」があります。

その中の一節を想起させるような描写が、所々で見られて、現世で生きる「不条理な」人間の宿命を、美しく描かれた「東洋の美」が、浮き彫りにしています。


主要な全米マスコミのレビューの95%が絶賛した、この色鮮やかな「東洋の美」は、映画の作品というよりは、ひとつの美術作品といった感じでしょうか。残念ながら私は、内容的には"絶賛"に辿り着きませんが(苦笑)、同監督の「悪い男 」など他の作品と比べると、この「人間」という生き物の「痛み」を、受け入れやすく、はかなくも美しく描かれていますね。

キム・ギドク監督が指揮する(本人も出演)、山水画のような壮大な映像美、という舞台の中で、「不条理な」人間が奏でる旋律は、あなたの心にどう響くでしょうか。この作品も非常に評価が分かれると思いますが、これまた、見ないことには語れませんしね(苦笑)。
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