Yoshishun

月に囚われた男のYoshishunのレビュー・感想・評価

月に囚われた男(2009年製作の映画)
3.5
デヴィッド・ボウイの息子、ダンカン・ジョーンズ監督デビュー作にして、世界的高評価を得たSFスリラー。

観客の想像に委ね、観客独自の解釈で楽しめるような作品は『ミッション:8ミニッツ』と同じで、1番の類似点は主人公が強制労働下にあるということ。さらに本作は、主人公が感じる孤独が象徴的。『スリー・ビルボード』でオスカーを獲得したサム・ロックウェルが1人2役(もしくは3役?)の演技により、驚愕の真実が明かされた後の男の葛藤が素晴らしいほど体現されている。

ただ、最大の衝撃を経た後の展開からが凡庸。大きな見せ場があるわけでもない、ほぼ1人芝居の低予算作品でありながら中盤までだれることがないのは監督の手腕によるものと思うが、さすがに冗長すぎるし、もう一捻りサプライズが欲しかったところ。『2001年宇宙の旅』を観てると明らかに悪役のはずの人工知能カーディがまさかの味方、クローン同士の対立かと思えば多少衝突はあれどあっさり協力したり、と展開には様々な驚きが用意されていた。

80年代SF映画のような古風なセットや雰囲気は父であるデヴィッド・ボウイの生きた時代の作品を踏襲したもの。懐古的な世界観を楽しめる。

個人的には『ミッション:8ミニッツ』が好みだが、一風変わったSF映画を観たい人にはもってこいの佳作。
Yoshishun

Yoshishun