れもん

崖の上のポニョのれもんのレビュー・感想・評価

崖の上のポニョ(2008年製作の映画)
5.0
ジブリ制作の劇場長編アニメーション映画コンプリートのため、2008年公開の15作目『崖の上のポニョ』を鑑賞。

宮崎駿監督の作品で知名度のある作品だが、夫婦ともに観たことが無かった。

映像はとにかく良かったし、ここまで観てきたジブリ作品の中で一番好みだった。
実際どうかは知らないけどクレヨンで描かれたような温かみのある背景と、あえて陰影などを排して描かれたのであろうイラストっぽいビジュアルの登場人物たち。
ラストに流れるエンドクレジットも手がこんでいて、五十音順で紹介されるキャストやスタッフの名前のそれぞれに可愛いアイコンがついており、全部スクショして見比べたいと思うほどだった。

ただ、ストーリーは割と「ご都合主義」というか、あそこまでの大災害を起こしたならリアルに死人が出るくらいの残酷さを示してもよかったんじゃないかと思ったりもした。
リサでも耕一でもひまわりの家の利用者でも、もしくは宗介が全く知らない誰かでもいいけど。
宗介が成長してポニョ以外の女性に恋愛感情を持った時、その時こそはポニョによる大災害で死人が出るのだろうか?

そこまでの物語を描くには尺が足りなそうだけど、それなら尺を延ばしてもいいんじゃないだろうか。
あと20分くらい長くても誰も文句は言わない。
いや、もしかしたらアニメーターが文句を言うのかもしれないが。

そして、最後まで宗介が両親であるリサと耕一のことを呼び捨てにしている理由は明かされなかったが、個人的には、リサが耕一に約束を破られ泣いている時の宗介の様子を見て、この家族は「機能不全家族」なのかなと思った。
よくわからない方は「イネイブラー」とか「プラケーター」というワードでググるとリサと宗介の関係のいびつさが理解できるかもしれない。
忘れてはいけないのは、宗介はまだ5歳の子供だということだ。

リサにはところどころ宗介の存在を軽んじる身勝手さを感じたが、特に大災害の最中での彼女の行動は全く理解不能なレベルだった。
宗介の命を危険に晒してまで自宅へ帰ったのに、その晩のうちに次は宗介を置いたまま職場へ戻る謎行動。
そこに、母親として息子を守ろうという気持ちは全く見えなかった。
なので、いくら美味しそうなインスタントラーメンを作ってくれようが、リサのことを良い母親とは思えなかった。

リサの行動について、他の方のレビューで「海に飲み込まれた夫を救うためにグランマンマーレと交渉して、自分の息子をポニョの婿に差し出したって話を聞いて、さらにあの母親が怖くなったw」「それがほんとかどうか知らないけど、たしかにそうやって考えると息子よりもうちに帰ってこない夫のほうに愛情を強く持っちゃってる母親像が見えてきて、いろいろ辻褄が合いそうだと思ったw」という説が書いてあり、確かにしっくりきてしまう説であることに震えた。

↓引用元レビュー
https://filmarks.com/movies/24771/reviews/108831805

また、色々と調べていくうちに、恐らくこの方の友人はこのブログを読んだのではないか?というブログにたどり着いたので紹介したい。
サブカル界隈では「オタキング」として有名な岡田斗司夫の公式ブログである。

↓岡田斗司夫公式ブログ
http://blog.livedoor.jp/okada_toshio/archives/51558513.html?ref=head_btn_next&id=4491189

このブログの他の記事も読んでみると、もしかしたら私が「ご都合主義」と感じた部分は実はそうではないのかもしれない、とも思ったが、そもそも初見の観客に伝わらない表現がそんなに好きではないので、そう感じた事実は書き残しておこうと思う。

多分この作品をぼんやりと観ているとリサと宗介の関係のいびつさには気づかない方がほとんどなのだろうと思う。
実際、他の方のレビューを読んでいてもそのいびつさに気づいているのは少数派だった。
それこそが宮崎駿監督の狙いなのかどうなのかはわからないけど、もし宮崎駿監督が「楽しい物語に見せかけた恐ろしい物語」を作りたかったのだとしたら、大成功だと思う。

新海誠監督の『天気の子』はこの作品に影響を受けたりしたのかな?と思ったりもした。
この作品が好きな方は観てみても良いかも。
二人の愛のために世界に大災害を引き起こすことの責任や葛藤については、『天気の子』のほうが上手く描いていると思う。

↓『天気の子』
https://filmarks.com/movies/82210/reviews/70583629

【2021.11.01.鑑賞】
【2021.11.07.レビュー編集】
れもん

れもん