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崖の上のポニョのpikaのネタバレレビュー・内容・結末

崖の上のポニョ(2008年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

宮崎駿ジブリで育ち大人になって初めて一人で映画館で見たジブリ。大人になったせいか感覚が変わったのか昔何度も見て楽しんだ諸作品ほど楽しめず、子供向けか、と思って終わったんだが子供を産んだあとトトロと共に何度も、いや何十回と再生して飽きるほど見ているとだんだんと不快な気持ちになってきた。
絵は凄いしアニメーションも心地よいほどで宗介は可愛いし見始めるとつい見入ってしまう魅力は多分にあるんだが宮崎駿作品の中で一番思想が強い作品に思える。子供向けに見せかけた大人への強烈な皮肉、自分本位な親たちに向けた批判、そんな親たちに育てられる子供たちに対する憐憫、自立せねばならぬ彼らを愛おしみ慈しみ哀れんで背を押す寓話。初めはそんな姿勢に身を正される思いだったがこんな風に決めつけた批判や皮肉なんてものに意味はないだろうと気づいた。
子どもたちの目線に立った、という意図かもしれないがそう見ると、初めて見たときから感じていることだが、あのラストの『身元引受人になる』といういきなり小難しい単語を用いた台詞の違和感に薄気味悪さを感じる。どんな責任だというのか。親世代が取らなかった責任を5歳に背負わせる現代への警鐘か、今は理解できなくても魅力あふれるビジュアルとアニメーションに惹きつけられ記憶に残した子どもたちが大人になって思い出し、親世代の二の舞を避けるよう芽を植え付けているのか。ちょうど宗介の親に当たる世代の我々は宮崎駿の全盛期に子供だったり多感な時代を過ごしてきた世代なわけで、自分の成してきたことを批判、もしくは無関係とばかりに暗喩的に否定、それか自分にも一端の責任があるとの思いで新たにやり直したか。
前作『ハウルの動く城』も次作『風立ちぬ』もそれまでの諸作品と同様に、いや『風立ちぬ』は個人的に最高傑作だと思うほど素晴らしい作品たと思うし愛してやまないのだがこのポニョだけは受け入れ難い。見るたびに嫌になっていく。なるべくトトロを見せようと思う。トトロは何度見ても好きだ。
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