けんざ

ガンモのけんざのレビュー・感想・評価

ガンモ(1997年製作の映画)
3.3
竜巻に襲われて深い傷を負ったアメリカの田舎町。人々の生活にも後遺症が残り、倫理を手放した社会からは調和が失われている。

猫を殺して精肉店に売り捌く少年を筆頭に、理性を保ったキャラクターは1人として登場しない。ひたすら人々の歪んだ生活が映し出されていく。まるで集団ヒステリーを起こしているかのように。善悪やモラルを超えたところに、退廃的なリアルが存在する。

ソロモンがドブのように濁った風呂場で母親に髪を洗われながらスパゲティを啜るシーン。あそこまで貧困を雄弁に伝える描写はないと思う。背景には壁にテープで貼られた焼きベーコン。この場面のために映画が作られたと言うのだから、何かしらの意図が込められていると考えるのが自然だが、実際にはただそういう画を撮りたかっただけなのだという。そして監督の思惑通り、あのシーンは強烈なインパクトを残している。

真偽は不明だけれども、ガンモの世界観を正しく伝えているハーモニー・コリン監督のエピソードを見つけたので載せておきたい。

"朝の4時ぐらいで、妹が「クランクアップおめでとう」って僕のところへ駆けつけてくれた。そうしたら、僕のなかで何が起こったのか、妹を持ち上げて窓から投げ出してしまった。その場にいた、特殊機材を扱う助手のハゲがそれを見て、ポケットナイフを取り出して僕を刺した。それで撮影はめでたく完了となったんだ"
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