J四郎

1984のJ四郎のレビュー・感想・評価

1984(1984年製作の映画)
3.6
ジョージ・オーウェルの有名な小説が原作。
映画化作品としては56年版もあるけど、コレはまさに1984年に二回目の映画化の時のもの。主演は昨年に残念ながら亡くなったジョン・ハート。

原作はSFファンには最早説明不要なほどの超有名作。
ディストピアものとして後に強烈な影響を与えた作品で、いま思い出すだけでも「未来世紀ブラジル」「華氏451」「THX 1138」「時計じかけのオレンジ」・・等々、映画だけでも膨大な数。
そいや村上春樹の「1Q84」ってなモノもあったっけ。

全体主義の恐ろしさを描いた内容で、確かトランプが大統領になったときアメリカで原作が飛ぶように売れたとかニュースでやってたね。
この映画の中でも人々の暮らしは徹底管理され、刑務所さながらの生活を強いられている。

うるさいほどプロパガンダ放送が垂れ流され、こっちまで洗脳されるかのごとき異様な高揚感を煽る。まるでパラレルワールドの1984年という”近未来”の観光ツアーをしている気分。
ほとんど地獄巡りだけどねぇ。こりゃ、欧米諸国ってより今なら北朝鮮やらカルト集団に近い気もする。

原作の時代にあった全体主義への恐怖感は映画でもよく見かける赤狩りや、果ては「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」のヒットにも影響を与えた。ある意味、この空気感が今のゾンビものヒットへ繋がっていると考えると面白い(こじつけだが)
その当時、どんな恐怖を感じていたかはこの映画のおっそろしい世界を観れば一目瞭然!確かにこんな世界はイヤだ。

さてこの映画だけど物凄く地味です。原作を忠実に再現しようとしたのか、情報量はものすごいけど映像はやたら陰鬱で、あまり盛り上がる場面が無い。(そこが逆にイヤ~な空気感を出してはいるけどね)
当時はヘアヌードがどうの話題になってたけど、無味乾燥なエロが出てくるだけで期待しちゃいけませんな。

しかし考えてみれば日本でも偏った情報や思想に傾いていると、フェイクニュースにコロッとやられそうな昨今。結構タイムリーな作品なのかも知れませんねぇ。
J四郎

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