凛太朗

1984の凛太朗のレビュー・感想・評価

1984(1984年製作の映画)
3.8
『2+2=5』
レディオヘッドの曲名にもありますが、作中及び原作内の用語である『二重思考』を端的に表しています。

「哀れなほど真実を知らないプロレタリア」とは、『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』の第2話『飽食の僕』の中で出てきた台詞(この話自体は『タクシードライバー』のオマージュ)ですが、ジョージ・オーウェルの『1984』が原作のこの映画を観てたら、何故かしらこの台詞が思い浮かびました。

ジョージ・オーウェルによるディストピア小説の傑作にして文学としても最高峰にあたる原作は既に何度か読んでいますが、この映画によって示されるディストピア感がなんと言っても最高ですね。
核戦争によって荒廃し、全体主義国家による分割統治の異常性、不穏感を視覚的に魅せる美術やカメラワークもさることながら、インダストリアルやエレクトロニカ、ダークアンビエントの匂いと近未来感がプンプン漂う、ドイツのクラウス・シュルツェ辺りを彷彿させる内省的な音楽。

残念ながら映画は説明不足な部分が多く、原作を超えるものではないけど、雰囲気は十分に出ていると思います。
似たような映画として同じ『1984』が下敷きにあるテリー・ギリアムの『未来世紀ブラジル』の方が、単純な面白さはあるんじゃないかと思いますが、まぁトーン自体だいぶ違います。

作中、ビッグ・ブラザー率いるイングソック(イングランド社会主義)は、色々なやり方、分かりやすいプロパガンダからニュースピークと呼ばれる言語統制、監視、盗聴、そして二重思考という、相反する思考をどちらとも受け入れることのできる能力を人々に実践させることによって、人間を支配しているわけですが、これって今の社会から見て、言うほど全体主義にだけ当てはまる恐ろしさですか?ってのがあります。
今のというか昔からかもしらないけど、日本やアメリカの資本主義や、メディアやSNSなどの在り方を見てると、まさに現代社会にも当てはまる恐ろしさやないかい!って感じなんですよね。
支配や操作してる側も怖いんですけど、無意識で操られている人々、特に集団状況における同調圧力の危うさというものが、怖いくらいに描かれていると思います。
ただし、この映画を観ただけでは、やはりかなり難解な映画だと思うので、原作を読んでみることをお勧めします。

「大切なのは生きることではなく、人間であること。」