KAJI77

1984のKAJI77のレビュー・感想・評価

1984(1984年製作の映画)
4.0
"BIG BROTHER IS WATCHING YOU."

圧倒的世界観と文才で知られる小説家、ジョージ・オーウェルの名作を映画化した、『1984』(1984)を鑑賞しました!

この作品の原作は1949年の刊行で、アントニー・バージェスの『時計じかけのオレンジ』や、レイ・ブラッドベリの『華氏451度』、日本で言うと伊坂幸太郎の『ゴールデンスランバー』や村上春樹の『1Q84』など、数々の作品に影響を与えた言わばプロトタイプ的な書物であり、僕が敬愛して止まない平沢進がボーカルをつとめたバンド、P-MODELの名曲『Big brother』の元ネタでもあります!映画化されている事を認知したのはつい最近で、急いで借りに行きましたw

[ あらすじ]
1950sの核戦争を経験した人類は、オセアニア、ユーラシア、イースタシアの3つの超大国によって分割統治されていた。思想や言語、生活まであらゆる行動が「テレスクリーン」という双方向性のあるモニターで監視され、自由主義は徹底的に排除された。そんな中、歴史改竄の仕事に従事していた主人公のウィンストン・スミスは、ノートに自分の考えを纏めるという違法行為に手を染めてしまい…。

あらすじからだけでも分からざるを得ないディストピア思想。この作品がほぼ全ての同系統作品の始祖と言って差し支えないでしょう。原作も読破しましたがかなり精巧で重層感のある内容に仕上がっておりました。

言っていること自体はファシズム(全体主義)批判に近いです。ここまで極端な描写をされると嫌でも戦いてしまいます。この映画が実際に1984年に公開されているというのも何とも皮肉で面白い。

全体主義体制って聞くとイタリアやドイツの暗黒時代を連想する方が多いと思いますが、古代まで遡れば歴史的にはあまり珍しい事では無いと思います。(寧ろその期間の方が長いような気もする)現代もある程度の自由は保証されているけど、ある種の情報操作は横行していますし、何ら変わらないような気がするのも鳥肌ものです…。ただ、今の時代ではベクトルを収束させる方向にではなく、逆に放散させる事によって信念の自由の根源を揺るがしているというのが実に狡賢い所です。

大切なのは主人公のように懐疑的な視点をもって生きることなのかもしれませんね。そんなことを思った1本でした…!
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