LEONkei

浮草のLEONkeiのレビュー・感想・評価

浮草(1959年製作の映画)
3.3
若尾文子(加代)が電報を出すシーンが印象的、鉛筆をペロッと舐め用紙にか書き綴る電報文。

清『〈ソコマデキテクタサイ〉?』
加代『〈ソコマデキテクダサイ〉や』
清『宛名は?』
加代『あんたや』

と言って机に寝かせた鉛筆を人差し指で軽く弾き、カラカラカラッと木と木が奏でる転がる音が何とも言えず耳に心地良い。

恥じらいながら誘うと言う高度なテクニックを使われたなら、大抵の男は『はいっ、分かりました』と二つ返事で答えてしまう。


松竹『浮草物語』をセルフリメイクした大映『浮草』は小津自身にも様々な思い入れや考え方があるのだろうが、時代も役者もスタッフも違えば全く別物の映画となる。

文化の変容と生物の進化は同じスピードで起きていると言われ、単に作り直す(remake)と言うより進化(evolution)したと言っていいだろう。

セルフリメイクと言えば市川崑の『犬神家の一族』『ビルマの竪琴』やヒッチコックの『知りすぎていた男(The Man Who Knew Too Much)』を思い出すが、過去の作品を振り返って見ると気恥ずかしかったり自身の成長から表現描写への意識が変化する気持ちは自分も理解する。

自分も形を残す仕事をしているので出来ることなら今現在の自分で全てを作り直したいが、過去は過去…それをする必然性も必要性も全くない..★,
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