ShotaOkubo

浮草のShotaOkuboのレビュー・感想・評価

浮草(1959年製作の映画)
5.0
この映画においても小津の説話論的な記号を確認することはできるが、この映画の白眉は亭主と女房とが向かい合う口論の場面にある。小津の映画に雨が降っているという例外が起こっているばかりか、映画にとって不可能な見つめ合うという行為に言い及んでいるからである。二つの視線が直行する場合、カメラは徹底して無力である。カメラが撮り得るのは、視線ではなく、せいぜい瞳のみであるからだ。小津は最も小津的なカメラワーク(切り返し)によって、この限界を明らかにする。小津の映画に雨が降る時(あってはならない天候の変化が起きる時)は、小津が映画の限界を証明する時なのである。
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