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カルロスのnetfilmsのレビュー・感想・評価

カルロス(2010年製作の映画)
4.1
 ベネズエラの活動家イリッチ・ラミレス・サンチェス(エドガー・ラミレス)は革命を崇拝し、パレスチナ解放人民戦線(PFLP)のリーダー、ワディ・ハダドに面会し自分を売り込む。まず手始めにPFLPの補佐としてジョセフ・エドワード・シーフを銃撃。日本赤軍によるフランス大使館銃撃の支援、オルリー空港でのイスラエルの航空機砲撃など、数々の事件で名前を売っていく。そして遂にPFLPと協力関係にあるイラクのサダム・フセインから、サウジアラビアの石油相とイランの石油相抹殺事件の首謀者に指名される。今作は主人公が革命テロリストとしてのし上がっていく姿を、当時のニュース映像を交えながら克明に描いている。革命の名においてはどんな非道さも残酷さも許されると言わんばかりのカルロスの残忍さと、仲間に見せる優しさとを対照的に描きながら、遂にフセインに指名されるまでの150分間を一気に見せる。彼の生い立ちやテロリストを志すようになる動機はここでは一切開示されていない。テロリストとして過ごした彼の20年にも及ぶ政治活動にフォーカスしていく。そのことが逆に彼のカリスマ性を浮き彫りにするかのようである。

 ここでもまたアサイヤスのアジア(黄色人種)への尋常ならざる思いが噴出している。日本赤軍のオランダ・ハーグでのフランス大使館銃撃のくだりには思いのほか時間が割かれている。空港で偽造パスポートと偽札所持で逮捕されるところから、オランダ・ハーグのフランス大使館に短銃武装で乱入し、占拠。大使ら11人の人質と交換にパリで勾留中の男を奪還、オランダから30万ドルと仏機を出させ、19日にシリアで投降する。カルロスとはあまり関係ないこの日本赤軍による最初の事件の一部始終を克明に描いている。アサイヤスがこのイリッチ・ラミレス・サンチェスという男に惚れ込んだのは、21世紀のテロの行方を予見すると共に、カルロスの尋常ならざる行動力への興味からではないだろうか?70年代という時代にヨーロッパやアラブの国々を転々としながら、様々な国で事件を引き起こしたイリッチ・ラミレス・サンチェスという男の本質に迫ることが、アサイヤス作品の根底にある国境のないボーダレスな登場人物に相通じる世界を持っているように思える。
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