星降る夜に押し入れ探検隊32
スコセッシの「沈黙」を観て何となく思い出し。
私が唯一所有しているパン兄弟の作品。
他の皆さんも書かれていますが、本作のラストの演出は神がかっています。
劇場でもボロ泣きしました。
スタイリッシュなオープニングで始まり期待度がMAXに。
随所におおおっ!!と思わせるカットが散在してはいるのですが、少しずつ「期待したほどではなかったかな?」なんて思いが頭をよぎり出します。
ところが、まさかラスト数分でむせび泣くことになろうとは…
聾唖者の彼にとっての友人といえば、兄のように慕う男とその彼女(正確には元カノ)、そして直接関わることのない仕事を廻してくれる男だけ…
ほんのひとときではあったが、相思相愛の女性もいた。
彼の人生にとって、彼らとつながっていられることだけが生きていることの全てだったのだろう。
彼が担当したある仕事をきっかけに、麻痺していた正常な感覚が彼の中にわきあがってくる。
どうしょもない孤影悄然の思いと、神にすがることさえ許されないであろう過去の重罪に彼の精神は完全に崩壊させられる…
主人公がこめかみに拳銃を当てているレビュー画像の私たちから見て左側にあるものが存在しています。
このシーンには彼が今まで生きてこれたことへの感謝、消えることのない復讐心、自らの手で負の連鎖を断ち切るための儀式、1人では逝きたくないといった孤独感…などが複雑に入り混じった、並々ならぬ思いが込められていたのでしょう。
もし彼が健常者であったなら、あの人の声が届いて…
いや…それでも同じ結末になったのかな…