みかんぼうや

未来世紀ブラジルのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

未来世紀ブラジル(1985年製作の映画)
3.3
【次々と展開されるシュールで奇天烈な映により構築されるユニークな世界観に魅了されるも、ストーリー展開にはハマりきれず。】

カルト的人気を博している有名SF作品。「イレイザー・ヘッド」や「まぼろしの市街戦」などジャンルは全く違いますがカルト系映画のハマった時の快感が忘れられず、以前から気になっていましたものの、ようやくの視聴。

フィル友さんのレビュー内容からも一筋縄ではいかない作品であることは重々承知していましたが、確かに圧倒的な独自性と世界観に溢れた作品でした。ですが、見応えは感じつつも、自分の感性には思ったほど合わなかったのが正直なところです。

SF的でありながらどこかレトロなユニークな世界観と独特な映像(撮影手法というよりは映し出されるシーンそのものが極めて夢想的)、そしてどんな方向に進んでいくか想像がつかないストーリー展開は、明らかに他の作品と一線を画す濃度の高さを持っています。しかも意外と“意味不明で難解”という印象もなく、どちらかというと“シュールで奇天烈な映像の塊”という感覚でした。

ストーリーも、情報化が進む中での管理社会からの解放を現実と幻想から描く、行き過ぎた管理社会へのアンチテーゼ的なメッセージ性はあるものの、物語の細部にまで注意し脳みそをフル回転させるようなものではなく、いわゆるディストピア物として練り込まれた独自の世界観や設定、キャラクターを楽しめればそれで十分な気がしました。

が、私的には、こういうシュール&奇天烈な雰囲気漂う作品は、映像的にもストーリー的にももう一段階爆発力のあるぶっ飛んだ、「これ作った人、完全に頭おかしいでしょ」と思わせられるくらいのものを期待してしまいます。その点、本作の場合、映像や世界観の独自性には惹かれるものの、中盤までのストーリー展開は意外と普通で(夢の挿絵が独特だったり、登場人物もクセある人物ばかりなのですが)、結局は夢に出てくる見知らぬ女性を追っかけて守るための逃避行、というオーソドックスな展開なので、特に中盤がやや冗長的に見えてしまい、結果として睡魔に襲われてしまいました。

これが「マッドマックス 怒りのデスロード」くらい弾け切っていれば、ストーリー以外の要素で交感神経が爆発的に活性化していたのでしょうけれど、そういう作品とも違いますからね。

とはいえ、ラスト30分強の展開は、中盤の冗長的な流れからハッと我に返るような見応えのある展開で、このノリが序盤から続いていたらもっと好きな作品だったのに!などと勝手に思ったのでした。オープニングのいきなりのテレビ爆破や情報剥奪税みたいな設定から、とんでもない作品が始まるのでは、と期待が跳ね上がっていただけに、その後がやや物足りなく感じたのかもしれません。

ちなみにラストの展開で配給会社のユニバーサルと監督のテリー・ギリアムが揉めに揉めたのは本作の有名なエピソードのようで、本作はエンディングが2つあるのですが、私が観たU-NEXTの配信版は、監督が再編集した監督の意図したものになっています。ユニバーサル版のエンディングは、作品を観た後にウェブで調べて知りましたが、はっきり言って作品の印象が180度変わるくらいの違いで驚きました。私は、断然監督派です。

この設定と世界観がどれだけ好きか、という個人的好みにかなり左右される作品で、私はハマりきれませんでしたが、熱狂的ファンが多くいる作品であることには納得のユニークな作品だと思います。そんな私も、もう一度観直したら、大好きな作品に変わっているのではないか、というなんとなくの予感があるのも否めません。
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