あらすじ:
遠未来、監視管理社会のディストピアなどこかで。保守派名士のぼんぼん主人公サムは、官僚でありながら大衆にも寄り添っている自負がある。
最近、会ったこともない女が毎夜の如く夢に出てくる。と、ある日夢の女に現実で遭遇。運命だと確信、彼女とのバラ色の日々を期待。だがその女、実は政府に追われる身。すなわち、本来捕縛すべき対象……。
「地位と主義を兼備した俺は特別な存在、大衆を操作するエリートだ。下品な成金にアホの上司に不器量な女、みんな俺より劣った連中だ。俺が慈悲深いから、お前らの生活に希望が残されているんだ。俺にはそのことがわかってる。」
こんな連中が世の中を作るとディストピアになるから、こうならないようにね、という警鐘。
非難の対象は、人生の無味乾燥を社会や他人のせいにする甘えにも追及。己が作ったシステムの餌食となった哀れなサム。でもその悲劇に不条理は無い。カフカの『城』を思い出した。