実にスットコドッコイな映画だ(褒め言葉です)。文字通りバグが原因で誤認逮捕された場面から始まって、しがない一官吏が一目惚れで恋に落ちてヒロインを救うべく奮闘するというストーリー。そんなにマジに構えなくても良いだろう、というようなツッコミどころのあるコメディなのだけれど、しかし笑えないのはこの映画が先取りしてしまっている「未来」を私たちが生きているからなのかもしれない。隅々まで管理されてお役所仕事を耐えることに強いられている状況において、頼れるのは結局は己の妄想でしかないのかなという苦い絶望。『ガタカ』に影響を与えたのではという場面も見受けられて、そのあたりパイオニアとして道を切り開いた一本なのかなと思う。今なら CG で片付く場所やネット社会故に不必要な箇所が、しかしアラとしてさほど目立たないのも製作者側の強固な美意識の賜物だろう。最後に流れる「ブラジル」の切なさに泣いてしまいそうになった。