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HANA-BIのknjmytnのレビュー・感想・評価

HANA-BI(1997年製作の映画)
4.7
傑作だ。

この映画を撮らないと先には進めない、という切実さをこんなに感じた映画はない。

北野映画の暴力と死は、ご飯を食べて、健康に気を使い、お金を稼いで、、みたいな“生きのびる”ことの対極にある死に近づく行為で、それが“生きる”ことを強烈に浮き彫りにしてる。
“生きのびる”行為を顧みずにただ“生きる”に純化した輝き。

自殺ともいわれているバイク事故によって顔面を失い、その後のリハビリのために描いた数々の絵が映画のあらゆるシーンで使われてる。この絵が本当に素晴らしかった。

顔面が花、身体が動物や人間。
咲き誇る花にみる強烈な生の輝き。その輝きの後、死を迎えていく。
咲くことで死ぬのか、死に近づくことによって咲けるのか。そのことを確かめるように描かれていた。
顔面の喪失と変化。それを受け止め、あらためて“生きる”ことを確かめる作業として必要だった数々の絵。

それを絵画展でのみ発表せずに映画監督として映画で、また新たな表現に産みなおした北野監督の才能とその決意に感動した。本当にすごい芸術家だ。

目隠しをして、鉄球を徐々に重くしながら一つずつ手の上にのせていく。あるとき急に軽くすると笑ってしまう。
予想外の出来事が笑いを産む。
そういうシーンが散りばめられていて、その究極が死であるとすると、笑いの中に潜む死を感じて、芸人とはなにかが少しわかったような気がした。

ソナチネは美学としての完成度が高く、本当に美しい映画で、
HANA―BIは美学の完成度を求めるよりも“生きる”というテーマに対してあまりにも切実なものが溢れていて、その輝きがあまりにもきれいで、本当に観れて良かった。
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