さすらいの用心棒

イーグル・アイのさすらいの用心棒のレビュー・感想・評価

イーグル・アイ(2008年製作の映画)
3.5
平凡な毎日を送っていた店員(シャイア・ラブーフ)の携帯に、知らない女から電話がかかってきた。「今すぐ逃げろ」という女の警告を無視した主人公はその直後、身に覚えのないテロ工作の容疑でFBIに拘束されてしまう────


サスペンスの神様・ヒッチコック監督が得意とした「巻き込まれ型」や「逃走劇」といった要素を踏襲しつつ、AIやテクノロジーを駆使して現代的にアレンジした作品。さすがスピルバーグが製作総指揮を執っているだけあって古典作へのリスペクトが感じられるのは嬉しいけど、その反動として新鮮味がほぼ皆無なのは残念ではある(楽器の演奏で爆発するという設定は『知りすぎた男』へのオマージュだろうが、いささか手垢がついている)。

それでも本作が9・11のあとに製作されたということには少なくとも価値があるだろう。同時多発テロを受けて「米国愛国者法」が制定され、この映画のように電話の盗聴、メールのやりとりといった国民の個人情報を監視できる権限を政府に与えてから5、6年も経ていない時期に管理社会の凶暴性を、スノーデン氏が暴露する以前に描いたのだから。

映画ではそれらを操っていたのは恣意的な人間によるものではなかったけれど、一歩間違えればこの映画よりもっとひどい惨事になる世界が、いま僕らが住んでいるところだということを再認識させてくれる。