エディ

ミツバチのささやきのエディのレビュー・感想・評価

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)
4.3
スペイン内戦時代の小さな村に住む6才の少女アナの心の成長を描いた素敵な映画。一般には、幼少時の混沌とした世界を描いているとか、内戦で傷ついた心を描いていると言われているようだが、過酷な社会に出るまでの束の間、子供の特権である素敵な世界を感じながらアナが少しずつ成長していくサマを描いた映画だと思っている。

少女アナは姉イザベル、養蜂家で蜂の研究者でもある父と母と一緒に暮らしている。ある日、村に巡回移動映画がやってきて、フランケンシュタインを上映したアナは、映画のワンシーンで少女とフランケンシュタインが出会う光景が忘れなれなかった。イザベルに聞くと、フランケンシュタインは怪物ではなく精霊で、実はこの村の外れの建物に潜んでいるという。

ある日勇気を出して廃屋に行くと、建物のそばにはとても大きな足跡が付いていたので、アナは精霊の存在を信じるようになる。。。

子供のときは、精霊とか妖怪が現実世界と一体になって住んでいるものだ。天井の模様が妖怪に見えたり、木陰で動くものが精霊に見えるものだ。アナはそんなものを感じることができる少女だが、姉イザベルは子供なのにませているというか、霊的なものに対する関心が低く常に大人のような冷めた見方をしている。

一方、父は蜂の研究に時間を割き、彼の描いた論文がナレーションとして語られる。「ミツバチは際限なく巣作りのために活動し、退屈な毎日を過ごして無意味に死んでいく」・・・

アナ家族が住む家の窓はミツバチの巣のような八角形なので、まるで蜂の巣の中の家族を見ているかのような気になってくるのだ。ミツバチの巣の形の窓をバックにしての無言の食事風景は、ガラス製のミツバチの巣箱の中で歯車のように活動しているミツバチと全く同じではないか。アナにとって家族は大きな存在だが、社会にとって彼らは蟻や蜂の大群の中の一つの歯車にしか過ぎないのだ。

そう、この家はアナにとってはミツバチの巣箱なのだ。大人になって外界に出ると、蜂のように無意味な活動を再現なくし、退屈な日々を送っていくのだろう。しかし、巣箱の中に居る間は外界に行く準備をしながら楽しい夢を見る事が出来るのだ。

母は毎日手紙を書き続けるが、送り主不明で全て返却されてしまう。村の外れに潜んでいた精霊は、アナが助けたことがきっかけで消息不明になってしまう。夢も希望もない砂を噛むような毎日を大人たちは過ごしていて、ませた姉イザベルはそこに片足を突っ込んでいる。

そんな中で子供の純真さを持った聡明なアナは、焚き火の火の上を飛べなかったが、精霊に会う術を見につけ、毒キノコの見分け方を知すなど少しずつ成長をしていく。

房を出れば休みは無い。幼虫に待つのは過酷な労働だ。しかし、今は蜂の巣の中で夢を観ることができるのだ。

少女アナが歯車になるまでの束の間の夢がスペインの小さな村の美しい映像を通して描かれている素敵な映画だ。