子どもの頃、今より無性にホラーものが怖かったのは私がそちらに行ってしまうと無意識に思っていたからなのかもしれない。実は近くに死の匂いがすることに、今より感覚的に気付いていたように思う。曖昧な境界を越えてしまいそうな予感や得体の知れない何かに導かれてしまうような気がしていた。アナのその目に宿した光に吸い込まれるように瞳の奥に幼い私が見え隠れした。正体不明な何かに駆り立てられる衝動、その時にしか見えない景色。どうやって世界を見ていたか少し思い出した気もした。鳥の羽ばたき、馬の蹄の音、黄色い巣箱模様の窓がある部屋、毒キノコ、厭世的にも映る絵画、黒猫。時代背景や検閲も相まってだとは思うけれど、多くを語らず想像させる余白の作り方や隠喩の使い方に惹き込まれた。
