なぜこんなにも強く惹かれるのでしょう。心の琴線に触れる名作。
巡回映画でフランケンシュタインがかかるという出だしから引き込まれる。
内戦で傷ついた大人。溝がありそうな両親。当時の独裁政権をとても静かな声で非難している風でもある。
それとは別次元の精神世界に生きる子供たち。
姉イサベルは善悪や生死、嘘などを理解し始めていて妹を怖がらせたりするが、幼いアナは無垢で純真。これ以上成長したらフランケンシュタインの存在も疑うであろう境界線にいる。
物事をまっすぐに捉え、信じる心の清らかさ。負傷兵に出会って少しずつ芽生える自我。観るたびあの瞳に心洗われる。アナ・トレントの存在はあまりに大きい。彼女の姿だけでも観る価値があります。
そして暗めのトーンの静謐な映像美。
草原、列車、ミツバチ、焚き火の炎。屋敷内の光と影…監督はフランドル派の絵画を意識したようですが、一つ一つ切り取ったらまさにフェルメールの絵のよう。もう思い出してもため息…
精霊がモチーフの、この上なく静かで美しい、私にとってのベストムービー。
