次男

ミツバチのささやきの次男のレビュー・感想・評価

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)
4.1
「フランケンシュタインはなんで少女を殺してしまったの?」

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あまりにも美カットが続き、極限まで説明が省かれているものだから、「ああもうただ見つめていればいいのかなあ」、なんて思っていたら、最後には無関係な僕にもたぶん伝わっていた。
計算高いくらい有効で的確なモチーフ使い。フランケンシュタイン、映画に見入る子供の眼、ミツバチと六角形の窓、良いキノコと悪いキノコ、ミツバチのささやき。

「ミツバチのささやき」だなあ。



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ネタバレ
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説明なく進む物語に、「なんの話?」となったのは正直なところだけど、無邪気に遊ぶ・暮らすアナを観ていたら、「なにも説明されてない・なにも知らない状態こそが鑑賞者のあるべき姿なのかも」と思えてきた。

少女たちの楽しげな生活は微笑ましいけど、なにやら空気は暗い。お母さんが誰かに出した不穏な手紙、どこか退廃の匂いのする景観。井戸の小屋に逃げてきた逃亡者は身の明るい存在ではないようで、彼は「フランケンシュタイン」なんだなあと思える。

きっとここには、少女や僕の知るよしのない、何か大きな、枠組みのようなものがあるんだろう。システムとか、体制とか、そういった言葉が思い浮かぶのは、きっと六角形のせいだ。

少女にとっても、僕にとっても、逃亡者はだれだったの?なんで死ななきゃいけなかったの?なんだけど、僕は中途半端に物分りが良くなったため、その先で「でもきっと死ななきゃいけない事情があるんやろな」と簡単に納得できてしまう。

少女はわからない。
少女の純朴な疑問になんて答えられるんやろか、少女の疑問は、願いは、ミツバチのささやき。

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後調べで背景が少しわかった。やっぱり難しい情勢を背負った時代で、いろいろなことに合点がいく。
でもだからと言って、「なんで逃亡者さんは殺されたの?」、アナになんて説明すればいいんだろう?
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