雨丘もびり

ミツバチのささやきの雨丘もびりのレビュー・感想・評価

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)
5.0
【following様の鑑賞リストから選んで観てみた】
目を外に開かされる映画。
見終えた後、ポスター見直して絶句。

ゆっくりな時間、風のわななく静かな町。 
美しく、ことば少なに編まれた田舎町の風景。
余白を埋めて観るよう、観客に要求する。

【昔むかし.....】
1940年(スペイン内戦終結)ごろのお話。
(戦勝した反乱軍の領地)カスティーリヤ地方オユエロス村で、
(フランコ支援に暗躍した国)アメリカの映画「フランケンシュタイン_1933'」が上映される。ご丁寧にもスペイン語吹替版。
原作は(反ファシズムのスペイン共産党を見殺しにした国)イギリスの小説。
(貧富の差を拡大し国民を苦しめた)カトリック派の学校に通う少女アナは、この映画にたくさんの疑問を抱き、姉イザベラと家に帰る。

カッコ内は説明されないけどたぶんそういうこと(冒頭5分でこんなん読み解けっか!(泣))。
 
googleMapで検索したら、オユエロス村を300kmほど北上するとゲルニカ村があった。
ドイツ空軍演習の標的にされ、惨たらしく蹂躙された村とは、別世界のような静けさと美しさを称えるオユエロス村。
少女たちの可愛らしさすら、辛辣に感じる。

【家族より "外交" にウツツを抜かす母親】
生活に窮していないのに、悲嘆に呉れた手紙を戦地の戦士宛てにしたためるアナたちの母親は、"市民の財産を不当に搾取した共産党"というプロパガンダを流布したフランコ政権への皮肉か。

【娘たちを愛し、道を誤らぬよう支配する父親】
「生まれたては良い匂いだが育つと変わる」と毒キノコを踏みつぶす(めっちゃ意味深)。
靴音で夜更かしする娘たちを威嚇し、「死ぬまで働くミツバチを見た人々は、悲しみと恐怖で目をそらす」と日記を書いた後、(あなたはどうだ?)と私たち観客を凝視する。

【妹の恐怖と嫉妬をあおり制御したがる姉イザベラ】
わー姉妹あるある。痛すぎて何も書けんwww。

【少女アナが抱く疎外感】
あるアクシデントがあり、アナは家族から逃げ出す。
川に映った顔をのぞき込むsituationが、フランケンシュタインのシーンと交錯する。
それは、怪物が自分の容姿を初めて知り、なぜ皆から排除されるかを思い知る残酷な場面。
http://paganpressbooks.com/jpl/LW125.HTM

違うから。
私は皆と違うから。
気付いてしまった自分を呪う。そして、同じ苦悩を抱えた哀しい存在と対峙する。
眼を閉じて怪物を受け入れるアナ。慄きながら、彼方との接吻。
精霊(messengar)たる列車の走る音を幻聴し、メッセージが世界中に送られた希望をもってFIN。
真っ黒な夜空に、青白い月光がまぶしい。

スペイン内戦の浅いデータをツギハギして書いた私の感想文も、怪物めいてきたね(^^;)。
時計のオルゴール曲、父の書斎に掛かっている絵など、読み解けなかった謎は多い。
ちりばめられたモティーフたちを安易につなげて納得せず、そのまま置いておこうと思う。

スペイン内戦後、フランコ政権下に生きた人たちの、不安や疎外感を汲み取るのは、たかだか90分映画を見ただけでは不可能。
安易に自分の中で完結させてはならないか。
悩ましすぎて寝られんかったw