クレセント

ペリカン文書のクレセントのレビュー・感想・評価

ペリカン文書(1993年製作の映画)
3.8
すべてが終わった。二人は固い握手を交わした。そして抱き合った。友達として、また同志として。形式的なものだったのかもしれない。しばらくして彼女は彼の元を離れた。そして後ろも見ずに歩き始めた。彼は微笑みながらそこにたたずんでいた。彼女は物足りなかった。だからものの10歩もしないうちに立ち止まった。そして今度は突然と振り返ると彼のもとに走った。そして彼の胸に大きく飛び込んだ。二人は固く抱き合った。彼は知っていた。彼女が彼を必要とし始めていたことを。だから彼は彼女を優しく受け止めた。かろうじて心の奥底にある感情を押しとどめるように。それが彼女にも伝わったのだ。熱い思いが過ぎ去るのを待つかのように二人は離れた。今度は彼女は二度と振り返らなかった。惜別の思いが二人にはあった。彼女が車で去るのを見届けた。彼はこれでよかったのだと改めて思った。そして彼を待つジェット機のタラップを勢いよく駆け上がっていった。どのような映像にしょうか。このシーンは監督のJ.パクラが最も腐心したのではなかったか。しかしこの余韻は、私にとって堪らなくよかった。
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